住民税は私たちが住んでいる行政サービスに必要な財源を地域住民が平等で負担する税金です。給与所得がある方のほとんどは住民税を収めていますが、退職後にはどのような手続きをおこなえば良いのでしょうか。
そこで、ここでは住民税の概要にくわえ、退職後にどのような手続きをおこなえば良いのかについてご紹介します。退職をご検討中の方、退職をした方は、ぜひご確認ください。
住民税とは?概要や計算方法
そもそも住民税とはどのような税金なのでしょうか。退職前には何となく引かれるものと感じていた住民税をここで明確になぜ徴収され、どのようなことに使われているのかを確認していきましょう。
住民税の概要
住民税は市町村民税と道府県民税からなる日本における地方税の一種です。1月1日にその市町村(都道府県)に住所を有する者に各自治体が課税します。住民税は地域社会の費用の負担を住民が広く分かち合うものであり、学校教育費、福祉費、消防費、道路費、公共交通費など地域社会の運営に必要な費用に充てられます。
また、住民税は所得割と均等割の2つから構成されます。所得割は前年の所得金額に応じて課税されるものです。税率は道府県民税が4%、市町村民税が6%です。ただし、自治体によって値が異なる可能性があるため、具体的な値は居住している自治体のホームページから確認しておきましょう。
次に、均等割は定額で課税されます。税額は道府県民税が1,500円、市町村民税が3,500円です。こちらも自治体によっては値が異なる可能性があるためご注意ください。
住民税の納税は原則として6月、8月、10月、翌年1月の4回に分けて納付します。納付方法は口座振替や納付書による納付などです。
税額の計算方法
住民税の金額は下記の流れで算出されます。
・合計所得金額
・総所得金額の算出
・課税所得の算出
・所得割の算出と均等割額の加算
まずは、合計所得金額の算出からおこなっていきます。合計所得金額とは、1年間に得た全ての所得です。そして、そちらを用いて総所得金額を「合計所得金額-損失の繰越控除」で計算していきます。損失の繰越控除は法的控除額や経費などであり、所得にマイナスがあったとみなされる場合に引くことができるものです。こちらは申請しないと合計所得金額から引かれず、結果的に納める税金額が大きくなるためご注意ください。
次には所得控除を総所得金額から引いて課税所得を求めます。所得控除には下記のようなものがあるため、自分に適用されるものがあるかどうかはそれぞれ確認しておきましょう。
・基礎控除
・配偶者控除、配偶者特別控除
・扶養控除
・寡婦控除、ひとり親控除
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・勤労学生控除
・雑損控除
・医療費控除
その後は課税所得に税率を掛けて所得割を計算します。最後に所得割から税額控除を引き、均等割額5,000円(道府県民税が1,500円、市町村民税が3,500円)の加算をおこないます。
住民税が非課税になる条件
まず、住民税には均等割と所得割それぞれで支払い要件が異なります。まず、所得割は100万円以上になると課税対象になります。均等割も100万円以上と設定している自治体が多いのですが、自治体によっては93万円としていることもあります。また、この金額は変わる可能性があるものです。そのため、住民税が課税される条件については各自治体のホームページで最新の情報を把握しておくことが重要になります。
ただし、下記のような条件に当てはまっている場合は非課税となります。
・生活保護法による扶助を受けている人
・障害者・未成年者・寡婦又はひとり親かつ前年中の合計所得金額が135万円以下の人 ※給与所得者の場合は年収204万4,000円未満
・前年中の合計所得金額が各自治体の定めている額以下である人
住民税を滞納してしまうと
住民税を滞納すると下記のようなことが起こります。
・延滞税が発生する
住民税の納期限は原則として翌年5月31日です。納期限までに納付しないと納期限の翌日から納付日までの日数に応じて延滞税が発生します。延滞税の計算式は下記のとおりです。
「未納税額×法的納期限の翌日から完納日までの日数÷365×14.6%(納期限の翌日から2月を経過する日までは7.3%)」
・督促状が届く
納期限までに納付しないと市町村から督促状が届きます。督促状には納期限と納付方法などが記載されています。そして、その督促状も無視すると財産の差押えなどの強制徴収を受ける可能性があります。差し押さえの対象となるものには預貯金や給与、自動車などがあります。
・信用情報機関に記録される
住民税の滞納は信用情報機関に記録されます。信用情報機関に記録されると住宅ローンやクレジットカードの審査に通りにくくなる可能性が高いです。
退職する場合の納付方法
退職する場合の住民税は主に3つのケースに分かれます。ではそれぞれでどのように納付をしていけば良いのか確認し、自分に当てはまっているケースの納付をおこなっていきましょう。
ケース①1月1日~5月31日に退職
1月1日から5月31日の間に退職した場合は基本的には退職月の給与、もしくは退職金から5月末までの住民税を一括で徴収されます。つまり、このケースでは自分で納付をおこなう必要がないのです。
ただし、退職月の給与と退職金の合計額より納める住民税額のほうが大きい場合は普通徴収に切り替え、自分で納付する必要があります。住民税額によって異なるためご注意ください。
ケース②6月1日~12月31日に退職した場合
次は年度の後半に退職をした場合です。こちらの場合、まず退職月の住民税は給与から天引きされて会社が納付します。ただし、その翌月以降に納める予定であった住民税については普通徴収に切り替えるため、自分で納付手続きを進めていくことが必要です。
この場合、居住している自治体から普通徴収をするための納税通知書は自宅に届けられます。ただし、会社次第では退職する月から翌年の5月分までの住民税を退職月の給与もしくは退職金から一括してもらうことも可能です。
ケース③退職前に再就職先が決まっている
退職前に再就職先が決まっている場合は再就職先に特別徴収を継続してもらう方法があります。こちらは給与から天引きされるため、特別な手続きは必要ありません。ただし、退職した会社と転職先の会社で事務的な手続きをする必要があるため、それぞれの了承がなければできません。
住民税申告の手続き
では、自分で住民税を納める際にはどのような手続きをすれば良いのでしょうか。ここで手続きの流れや必要書類について確認しておき、実際に納める際にスムーズに進められるようにしておきましょう。
必要書類
住民税を納める際には下記のような書類が必要になります。
所得の証明書
・給与収入や公的年金の源泉徴収票
・帳簿や領収書(事業者の場合)
各控除書類
・社会保険料、医療費、寄付金などの領収書
・生命保険、地震保険などの証明書
・医療費控除の明細書
・障碍者手帳など
本人確認書類
・マイナンバーカード
・マイナンバーの通知カード
・運転免許証
・健康保険証
・パスポート
・印鑑
手続き①必要書類の入手
まずは前述の必要書類を入手していきましょう。各書類は支払先から自宅に自動的に届けられる、もしくは申請することで受け取ることができます。また、税が関わっているものに関しては自治体の税務課で入手することも可能です。支払先や自治体によって具体的な手続きは異なるため、それぞれでしっかりと問い合わせて適宜進めていきましょう。
手続き②申告書の記入
必要書類が揃ったら申告書を記入します。申告書は市区町村の税務課で入手可能です。また、自治体によっては自治体のホームページからダウンロードできることもあります。そして、申告書には氏名、住所、前年中の収入、扶養親族の人数などさまざまな事項を記入する必要があります。記入時に分からない部分が出てきた場合は市区町村の税務課に相談しましょう。
手続き③添付書類の準備
申告書に記載した事項を証明する書類を添付します。添付書類は必要書類のうち申告書に記載した事項を証明するものです。添付書類がないと申告が認められませんので、添付を忘れないように注意しておきましょう。
手続き④住民税の納付
申告書の提出後、自宅に住民税の納税通知書が届きます。納税通知書に記載された納期限までに納付しましょう。納付方法は口座振替、納付書による納付、コンビニエンスストアや金融機関での納付などがあります。納付時に、納税通知書や納付書の控えを受け取っておきましょう。納付書の控えは住民税の証明書として利用できます。
手続きを進める際の注意点
まず、申告が必要であるかどうかは事前に確認しておきましょう。申告が不要であるのに書類を準備していると無駄な時間が増えてしまいます。また、納付時期と手続きの時期の違いについても十分に把握しておくことが重要です。手続きの時期は確定申告時の2月16日から3月15日ですが、納付時期は6月、8月、10月、1月の4回であり、翌月10日(自治体によって異なる)までに納付となっています。
さらに、控除があるのに申請しない場合もあるため、控除については確実に申請することをおすすめいたします。とくに、配当割額控除や株式等譲渡所得額控除は忘れやすいため注意が必要です。
これらのように住民税の納付はさまざまなことを意識しなければなりません。そのため、人によっては手続きが困難に感じる事もあるかと思います。そのような場合は、税理士などの専門家へ相談・依頼することも考えていきましょう。
まとめ
住民税は、私たちの生活に欠かせない行政サービスに役立っている大切な税金です。そして、住民税は退職後に手続きが必要になるケースがあります。自分の状