住民税は住んでいる地域の行政サービスに必要な財源を地域住民が公平に負担する税金です。そして、この住民税は働き方がパートであったとしても負担する必要が出てくる場合があります。
ここでは住民税の概要やパートでも負担すべきケースについてご紹介します。パートで働いており、住民税について気になっている方は、ぜひご確認ください。
住民税の概要や計算方法
まず、住民税とはどのような税金なのでしょうか。自然と引かれている税金ですが、なぜ徴収され、どのようなことに使われているかは知っておくことが重要です。まずは住民税の概要について知っておきましょう。
住民税の概要
住民税は居住している都道府県、市区町村に収める税金のことです。収めた税金は行政サービスを維持するために使われています。都道府県に収める税金は道府県民税、市区町村に収める税金は市町村民税と呼びますが、これらを総称して住民税と呼んでいるのです。
そして、住民税は収入に応じて税額が決定しますが、具体的な金額は都道府県・市区町村によって異なります。そのため、詳細な住民税を知りたい場合には各都道府県の税率などを調べなければなりません。
住民税の計算方法
住民税の算出には大きく分けて6つの工程で算出していきます。まず1つ目は、総所得金額の算出です。総所得金額は、1年間に得た所得であり「合計所得金額-損失の繰越控除」で計算されます。損失の繰越控除は法的控除額や経費などです。
次には、所得控除を総所得金額から引いて課税対象額を求めます。所得控除には下記のようなものがあるため、自分に適用されるものがあるかどうかはそれぞれ確認しておきましょう。
・基礎控除
・寡婦控除
・ひとり親控除
・勤労学生控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・雑損控除
・医療費控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・障害者控除
その後は課税所得に税率を掛けて所得割を計算します。最後に所得割から税額控除を引き、均等割額5,000円(道府県民税が1,500円、市町村民税が3,500円)の加算をおこないます。
住民税が非課税になる要件
ただし、下記のような条件に当てはまっている場合は非課税となります。
・生活保護法による扶助を受けている人
・障害者・未成年者・寡婦又はひとり親かつ前年中の合計所得金額が135万円以下の人。給与所得者の場合は年収204万4,000円未満
・前年中の合計所得金額が各自治体の定めている額以下である人
滞納してしまった場合
住民税を滞納してしまうと延滞税が発生します。延滞税は「未納税額×法的納期限の翌日から完納日までの日数÷365×14.6%(納期限の翌日から2月を経過する日までは7.3%)」で計算されます。例えば、本来収めるべきであった税金が8万円で、2年延滞したとすると「8万円×730日÷365×0.146=23,360円」となります。この分を追加で支払わなければなりません。もちろん、延滞日数が長くなるほどこれ以上の値になっていきます。また、非課税証明書や所得証明書をもらうことができないなどもデメリットとして出てきます。
パートで働いている場合、多くの職場では天引きをして住民税を支払ってくれています。しかし、すべての職場がそうしているわけではありません。住民税が確実に支払われているか確証がない場合は勤務先に聞いておきましょう。
ケース別の住民税額の算出方法
住民税額は各々の状況によって変わるものです。では、ここでケース別にどのような住民税額となるのかを確認していきましょう。なお、年収別のケースでは既婚であり基礎控除と給与所得控除以外はないものとします。また、ここでご紹介しているのはあくまでも一例であるため、厳密な値についてはご自身の状況と照らしあわせてご確認ください。もし、難しければ税理士などの専門家へ相談することをお勧めいたします。
学生かつ未成年で未婚
学生かつ未成年で未婚の場合は合計所得金額が135万円以下、給与のみの場合204万円以下は住民税が非課税となります。学生、未成年、未婚の3つすべてに当てはまっていないとこちらは適用されないためご注意ください。なお、合計所得金額や給与が上記のものを超えると住民税はかかってきます。
たとえば、給与収入が300万円で基礎控除以外がないとすると総所得金額は2,020,000円になり、住民税は161,500となります。なお、ここから所得税もかかってくる点にはご注意ください。
勤労学生控除
勤労学生控除とは学生がアルバイト等で給与を得ている場合、納付する税金額が軽減される制度をいいます。ただし、勤労学生控除を受けるためには以下の要件を満たすことが必要です。
・学校教育法に規定する大学、高等専門学校、専修学校の学生であること。
・アルバイト等の給与所得のみで、その年中の給与の収入金額が130万円以下であること。
・扶養親族を有しないこと。
勤労学生控除を受けるためには、給与の支払いを受ける事業者から年末調整や確定申告の際に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に勤労学生控除の申告をする必要があります。
勤労学生控除を受けると所得税と住民税の税負担が軽減されるため、要件を満たしているのであれば勤務先に相談することがおすすめです。例えば、給与の収入金額が130万円の場合、勤労学生控除を受けることで所得税は約10万円、住民税は約2万円軽減されます。
年収100万円未満
年収100万円未満の場合、住民税はかかってきません。こちらは給与所得控除額の65万円と基礎控除の33万円が控除されるからです。給与所得を得ているパートはこれらが最初からあるため、住民税がかからないのです。住民税をかからせたくない場合は、年収100万円を超えないように調節しましょう。ただし、所得割課税基準は自治体によって値が異なる場合があるためご注意ください。
年収103万円
では、年収がちょうど103万円と100万円を超えるとどうなるのでしょうか。例として、東京の目黒区に住んでいるとします。東京都の都民税は4%、目黒区の市町村民税(特別区民税)は6%です。
そして、総所得金額は103万円-98万円の5万円となります。そこから所得割の5,000円、均等割の5,000円(都民税1,500円+市区町村税3,500円)の合計である10,000円が住民税額です。103万円以下であれば大丈夫と考えている方もいらっしゃいますが、そちらは所得税の話になります。所得税と住民税は別の税金であるため、しっかりと区別しておきましょう。
年収120万円(生命保険未加入)
住民税は生命保険に入っているかどうかで値が変わります。まずは、年収120万円で生命保険に加入していない場合を考えてみましょう。
まず、課税所得金額は120万円から基礎控除と給与所得控除を引いた220,000円です。そして、所得割として10%の22,000円がかかります。そこから均等割5,000円(都民税1,500円+市区町村税3,500円)を合算した値である27,000円が住民税額です。
年収120万円(生命保険加入)
では、パート先で生命保険に加入しているとどうなるのでしょうか。まず、生命保険への加入は、一定規模の会社で年収が106万円以上になると加入しなければなりません。生命保険へ加入すると保険料がかかってきますが、住民税に関しては社会保険料控除が適用されることで税負担が減ります。
では、どのぐらい減るのか確認してみましょう。まず、課税所得金額は基礎控除と給与所得控除を引いた値からさらに社会保険料控除の166,404円(月給10万円と仮定した場合)を引きます。ですので、課税所得金額は53,596円です。そこから1つ前のケースと同様に税額を掛けます。結果的には、住民税額が13,000となります。このように、今回のケースであると生命保険へ加入することで住民税額が14,000円減りました。ただし、その分保険料を支払っているので支出自体は減っていません。何らかの理由で住民税を減らしたい場合には生命保険へ加入することが適しています。
住民税額を抑える方法
住民税額を抑える方法は、主に6つのものがあります。住民税額を減らしたい場合は自分に合っている方法をおこなっていきましょう。
方法①給与調整
住民税額は給与に掛かってくる税金です。そのため、給与が控除額を下回っていれば住民税はかかりません。そのため、住民税を減らしたいのであればまずは給与調整から始めましょう。こちらはパート先やご自身が望む収入などを考えながらお進めください。具体的な金額は自治体で異なる可能性がありますが、多くの場合は100万円を超えないようにすることが必要です。
方法②通勤手当をもらう
一定の限度額までの通勤手当は、所得税や住民税が非課税になるので税金がかかりません。
そのため、同じ金額をもらうなら給料としてもらうより通勤手当としてもらった方が節税になってお得です。ただし、通勤手当の非課税額は交通手段によって値が異なります。そのため、通勤手当を考える際には手段別の限度額についても調べておくことが重要です。具体的には、電車・バスの場合は最短ルートの1か月分の定期代で月10万円、マイカー通勤の場合は下記のように距離別で定められています。
通勤距離(片道) | 非課税限度額 |
2km未満 | - |
2km以上10km未満 | 4,100円 |
10km以上15km未満 | 6,500円 |
15km以上25km未満 | 11,300円 |
25km以上35km未満 | 16,100円 |
35km以上45km未満 | 20,900円 |
45km以上 | 24,500円 |
方法③社会保険料控除の適用
社会保険料は給与所得から差し引くことが可能です。そのため、社会保険料を多く支払っているほど課税所得が減り、住民税を減らすことができます。社会保険料控除の対象となる保険料は以下のとおりです。
・健康保険料
・厚生年金保険料
・雇用保険料
・労災保険料
社会保険料控除は、勤務先が年末調整を行ってくれている場合は自動的に適用されます。
方法④医療費控除の適用
医療費控除は、課税対象となる所得から高額になった医療費を差し引く制度です。具体的には「実際に支出した医療費の合計-10万円-支給された保険金」が控除額となります。ただし、所得200万円以下の場合は10万円ではなく、所得の5%で計算されるためご注意ください。ただし、人間ドッグ(重大な病気がなかった場合)、マッサージなどは対象とならないためご注意ください。また、こちらは自分で確定申告することが必要です。
方法⑤個人確定拠出年金を始める
個人確定拠出年金(iDeCo)は自ら掛金を拠出して運用し、将来に年金として受け取る制度です。iDeCoで拠出した掛金は全額所得控除の対象となります。国民年金などはありますが、余裕を持って貯蓄したい場合は個人確定拠出年金を始めましょう。
方法⑥ふるさと納税をおこなう
ふるさと納税は自分の住民票がある市町村に納める地方税を全国の自治体に寄附できる制度です。そして、その見返りとしてお礼品を貰うことができます。寄附した金額のうち2,000円を除いた金額が所得税と住民税から控除されます。ふるさと納税はお礼がもらえる、所得控除・税額控除の両方の対象となど節税効果が大きいです。
まとめ
今回は住民税の概要や計算方法、滞納した場合の対応、ケース別の住民税額の算出方法、住民税額を抑える方法などについてご紹介しました。
住民税は私たちの生活に密着した税金です。パートでも負担するケースに当てはまっている場合は、適切な方法で納付をおこなっていきましょう。