パートは年末調整をしないといけない?必要なケースや方法をご紹介
2023年11月20日


年末調整はするべきかどうかが判断しにくい場合があります。
その1つがパートで勤務をしている場合です。果たしてパート勤務では年末調整は必要なのでしょうか。
この記事では、パートは年末調整をする必要があるのかどうかをご紹介します。パートとして働いており、年末調整に不安を持っている方はぜひご確認ください。
年末調整とは?
そもそも年末調整とはどのような手続きなのでしょうか。よく聞く言葉ではありますが、その内容をよく知らない方も多くいらっしゃいます。とくに、年末調整と確定申告の違いは混乱しやすいです。ここで、年末調整は何のために設けられているものであるのかを確認しておきましょう。
年末調整の概要
年末調整とは、給与・賞与から源泉徴収で天引きされた所得税の過不足を調整する制度のことです。一般的に会社員は会社が事前に給与から所得税を差し引きますが、この時には念のため多めに徴収しています。そして、最終的に年末調整で引かれすぎた税金の返還(還付)が行われるのです。ただし、必ず帰ってくるのではなく逆に追加で支払う、もしくはプラスマイナス0の場合もあります。
会社員であれば11月から12月ごろに会社から必要書類を受け取り、それに記入することで会社が手続きを行ってくれます。自分で行うことも可能ですが、会社に手続きをすべて任せている人が多いことから内容や手続き方法があまり知られていません。
確定申告との違い
確定申告は1年間の所得額を確定するために行う手続きです。そこから所得税や住民税が計算され、納めるべき額が明確になります。確定申告は、自分で所得を申請する必要がある方が行わなければなりません。例えば、個人事業主、副業をしている会社員などが当てはまります。
さらに、申告できる所得控除はかなり異なります。確定申告は年末調整における控除に追加される形です。下記のいずれかの控除を利用している場合には注意しておきましょう。
年末調整
・基礎控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・ひとり親控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・寡婦控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・障害者控除
・勤労学生控除
・住宅借入金等特別控除
確定申告
・医療費控除
・寄付金控除
・雑損控除
・住宅借入金等特別控除
スケジュール
年末調整と確定申告は納付期限にも違いがあります。具体的には、年末調整は翌年1月31日、確定申告は翌年2月16日から3月15日の間と2か月もの差があるものです。とくに、年末調整は1月31日と年度変更のすぐ後に期限となっているため、修正が起こる可能性も考え、できるだけ年度内で終わらせるようにしておきましょう。
年末調整の対象はどう決まる?
年末調整はすべての人が行わなければならないものではありません。では、年末調整はどのような人が対象となるのでしょうか。ここで、対象にならない人、なる人の違いを確認しておきましょう。
年末調整の対象にならない人
年末調整は会社勤めでない人は基本的に対象外となります。ただし、副業などを行っている場合は対象外となり、自分で手続きを行わなければなりません。対象外となる人の例は下記のとおりです。
・個人事業主(自営業やフリーランスなど)
・給与所得が2,000万円を超えている
・副業をしている(2カ所以上から給与の支払いを受けている)
・災害減免法の規定に該当する人
・継続して同一の雇用主に雇用されない人
・扶養に入っている人
災害減免法とは災害によって住宅・家財に損害を受けたときに適用される免除制度であり、所得税が免除されます。保険金等の補填額を差し引いた損失額が2分の1以上の住宅・家財に限定されるなど適用範囲が複雑であるため、災害に遭った場合には弁護士や保険会社などの専門家と相談しながら手続きを進めていきましょう。
年末調整の対象になる人
年末調整の対象となる人は、会社勤めであり、給与所得者の扶養控除等申告書を提出している人です。基本的には会社勤めで正社員として働いているのであれば対象となります。
また、正社員にくわえ、契約社員やパート・アルバイトも含まれます。なお、転職などによって途中で雇用先が変わった場合には新しい会社で年末調整を行うことが必要です。
パート・アルバイトの場合の手続き
前述のとおり、パート・アルバイトであっても年末調整は必要です。しかし、扶養に入っていれば年末調整をする必要はありません。つまり、パート・アルバイトであっても扶養から外れると年末調整が必要なのです。次に、実際にどのように手続きを進めていくのか確認していきましょう。
手続き方法
年末調整の手続き方法は下記のとおりです。
・源泉徴収票を提出(11月上旬から中旬)
・申告書類を提出(11月中旬から下旬)
・年末調整の計算(12月)
・税務署もしくは市区町村に申告書類を提出(翌年1月)
このようにスケジュールが比較的タイトであるため、事前に必要書類の準備や流れを確認しておくことが重要です。
必要書類
年末調整には下記の3つが必要です。
1.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
2.給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
3.給与所得者の保険料控除申告書
4.給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書
1つ目は扶養控除、障害者控除、寡婦・寡夫控除、勤労学生控除、ひとり親控除を受けるために必要な書類です。扶養親族がいない場合は空欄のまま提出します。書類は国税庁のホームページから入手可能です。
2つ目の書類は基礎控除のための書類です。これら3種類の紙は1枚にまとまっており、自分に必要な部分を記入していきます。基礎控除はすべての人に適用されるため、扶養の有無など関係なしに提出が可能です。こちらも国税庁のホームページから入手することができます。
3つ目は、個人的に加入している生命保険の料金や地震保険料などの控除を申告するための書類です。ただし、健康保険料と年金保険料は対象外となる点にご注意ください。これら書類は10月ごろに保険会社から郵送で送られてきます。手元に残っていないのであれば再発行が可能であるかを保険会社へ問い合わせましょう。
4つ目の書類は住宅ローン控除を申請するために必要です。住宅を購入しており、ローン控除を利用する場合は購入時に受け取った書類と共に提出していきましょう。
書き方
上記書類の書き方は複雑ですが、国税庁のホームページには記入例があります。ですので、基本的にはこの記入例を横に同じように埋めていくことがおすすめです。そのうえで分からないことが出てきた際には市区町村などに問い合わせましょう。それぞれの記入例は下記のとおりです。
2.給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
4.給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書
パートの年末調整の注意点

パートは辞めた時期などで申告の有無が変わります。ここで自分の状況と照らし合わせながら注意点をいくつか確認していきましょう。
年末調整をしなくて良い場合
会社は源泉徴収を行って所得税にあたる金額を多めに給与から引いています。源泉徴収をしている場合、基本的には会社が年末調整を行うことが多いです。そのため、改めて自分で確定申告をする必要はありません。
ただし、勤務先で源泉徴収をされているのにも関わらず、年末調整がされていないことがあります。年末調整は会社側の義務であり、正しく行っていないと「1年以下の懲役または50万円以下の罰金。年末調整を行ったが、追加の徴収額を納付しなかった場合は、10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方」が科せられますが、すべての企業が正しい手続きをしているとは限りません。不安に感じる場合は努めている会社に年末調整を行っているのか聞いておきましょう。
12月以前にパートを辞めた場合
年末調整を会社が行う場合、その対象は12月時点で在籍している従業員です。そのため、途中でやめた従業員に関して会社は年末調整を行う義務がありません。そのため、納める税金を確定する確定申告は自分で行うことが必要です。
退職後に別の会社に再就職した場合は転職先の企業に依頼することができます。その場合、確定申告は不要です。
パートを掛け持ちしている場合
パートを掛け持ちしている場合、年末調整が行われるのは1社のみというルールがあります。そのため、最終的な所得を確定させるために確定申告を自分ですることが必要です。また、年末調整は収入の多いほうで行っていきます。ダブルワークで働いている方は収入の大小についても注意しておきましょう。
パート以外の副業をしている場合
パート以外に副業をしている場合、その副業の1年間の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。副業とみなされる例としては下記のものがあります。また、下記のものに限らず、何らかの形で収入を得ている場合には注意しておきましょう。副業であるのかどうかは所轄の税務署に確認できます。
・内職
・クラウドソーシング
・個人取引(フリマアプリやネットオークションなど)
・アフィリエイト収入 など
ただし、ここで言う所得は得た収益から経費を引いた値のことです。たとえ、副業の収入が40万円であっても、それを実現するための経費が30万円であれば所得は10万円になり、確定申告を行う必要はありません。
まとめ
年末調整は給与所得者が税金の過不足を調整する重要な手続きです。パート・アルバイトの方も、対象となる場合は必ず年末調整を行いましょう。そして、対象となるかどうかは個人の状況によって異なるため、それぞれで確認が必要です。