お仕事コラム

再就職手当とは?もらえる条件や手続きの流れをご紹介

2023年9月29日

再就職手当は再就職する際に受け取ることができる手当であり、手元に残る金額を大きくすることができます。しかし、再就職手当を自分は貰えるのか、貰うための手続きが分からないと思う方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では再就職手当の概要に加え、メリットやデメリット、受給条件、手続きの流れ、さらに受給時の注意点について紹介します。再就職を考えている方は、ぜひご確認ください。

再就職手当とは?メリットやデメリット

履歴書

そもそも、再就職手当とはどのような制度なのでしょうか。また、再就職手当にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。これらを確認することで自分は再就職手当を受け取るべきかどうかを知ることができます。

再就職手当は再就職を促すための手当

再就職手当は名称のとおり、再就職を促すための手当です。というのも、失業すると失業保険というものが支給されます。こちらは次の就職までの生活費などに充てるために支給される手当です。

しかし、失業保険があると貯金がなくてもある程度の生活は送れるため、次の就職に対する意欲が下がりかねません。そこで、一定期限以内の再就職であれば失業保険よりも大きな金額を出す再就職手当を用意し、再就職の意欲を高めているのです。こういった性質があることから再就職手当は就職祝い金と呼ばれることもあります。

再就職手当と失業保険はどちらも雇用保険から支給されるため、混合されることも少なくありません。しかし、設けられている目的が異なるため、これらの違いについてしっかりと理解しておきましょう。また、就職までの間を支える失業保険と就職時に支給される再就職手当は併用できない点にもご注意ください。

再就職手当の受給額

再就職手当の受給額は「受給額=基本手当日額×支給残日数×給付率」で計算されます。

まず、基本手当日額は基本手当の一日当たりの支給額であり、雇用保険受給資格者証から確認することが可能です。ただし、再就職手当の計算に用いる際には離職時の年齢が60歳未満の場合には6,290円、60歳以上65歳未満の場合には5,085円(令和6年7月31日まで)と上限があるためご注意ください。また、こちらは毎月勤労統計の平均給与額から8月1日に改定されるため、今の年度時点での上限はしっかりと把握しておきましょう。

支給残日数も雇用保険受給資格者証に記載されています。ただし、こちらに記載されているのは最後に失業認定を受けた日における支給残日数であるため、最後の失業認定日から再就職日の前日までの日数を引くことが必要です。

例えば、認定日が2月10日で残日数が80日、再就職日が2月20日の場合、支給残日数は80から10日を引いた70日となります。

最後の給付率は所定給付日数と支給残日数から決定される値です。具体的な値は下記のようになります。

所定給付日数支給残日数
支給率60%支給率70%
90日30日以上60日以上
120日40日以上80日以上
150日50日以上100日以上
180日60日以上120日以上
210日70日以上140日以上
240日80日以上160日以上
270日90日以上180日以上
300日100日以上200日以上
330日110日以上220日以上
360日120日以上240日以上

こちらの表からわかるとおり、支給残日数が多く残っているほど支給額も大きくなります。そのため、概要で解説したように再就職を促す手当となっているのです。多くの値は雇用保険受給資格者証から知ることができるため、自分のものと照らし合わせながら確認していきましょう。

再就職手当のメリット・デメリット

再就職手当にはメリットとデメリットの両方があります。デメリットについて事前によく知らなかった場合、受け取らなければ良かったと思ってしまうかもしれません。ここでメリットとデメリットについて総合的に確認し、申請すべきかどうかを考えていきましょう。

メリット①早く就職すると給付率が高くなる

給付額の計算方法で解説したように、再就職手当は早く再就職するほど受け取る額が大きくなります。

例として、基本手当日額が4,000円、所定給付日数が270日の場合を考えてみましょう。もし、受給資格決定日以後50日目に就職すれば給付額は下記のように計算されます。

・4,000円×228日×70%=638,400円

一方で受給資格決定日以後100日目に就職した場合は受給額が下記のようになります。

・4,000円×178日×60%=427,200円

こちらの例では21万円の差が出ています。就職先をじっくりと考えることも重要ですが、再就職手当の給付率も頭に入れながら就職活動を進めていきましょう。

メリット②失業手当のみよりも受給額が高くなる

失業手当は「基本手当日額×給付日数×30%」で計算されます。このように失業保険は再就職手当と比べると給付率が低くなっているのです。前職の給与が30万円とすると失業手当と再就職手当では下記の差が出てきます。

支給残日数失業手当再就職手当
30日10.8万円
60日10.8万円25.2万円
90日16.2万円37.8万円

差がもっとも大きい支給残日数90日では2倍以上の差があります。再就職手当は失業手当よりも受け取る額が大きくなることは認識しておきましょう。

メリット③再就職先を退職しても失業保険を申請できる

場合によっては再就職先を退職することもあるかと思います。その場合、再就職手当を受け取っている場合でも失業手当を申請することが可能です。

このような場合には、再就職手当の額を基本手当日額で割った日数分の失業手当を受け取ったとみなし、残りの日数分の基本手当が支給されます。元々の失業手当を受け取れる訳ではありませんが、それでも安心して再就職ができる要素の1つです。

デメリット①失業手当が打ち切られる

再就職手当と失業手当は支給する目的が異なるため、併用ができません。そのため、再就職手当を受給すると失業手当は打ち切りになります。しかし、メリットで解説したように受給額自体は大きくなるため、特段の理由がない限りはメリットが少ないでしょう。

こちらのデメリットが大きくなる状況としては、心身の不調でゆっくりと就活をしたい、休職中に難関資格の取得を目指している、などが挙げられます。

デメリット②再就職を吟味しない可能性が出てくる

再就職手当は早く就職するほど受給額が大きくなります。そのため、再就職を焦ってしまう可能性が出てくるのです。

再就職は事業内容や社風、人柄、自分が将来やりたいこと、など多くの要素から判断していかなければなりません。そのため、ある程度は時間をかけていくことが重要です。再就職手当の受給額から吟味せずに選んでしまうと、すぐに退職する可能性が高くなるため注意しておきましょう。

デメリット③早めの申請が必要

再就職手当は申請が必要です。そして、申請には「再就職の翌日から1か月以内が原則」と期限が設けられています。また、申請書類には再就職先に記入してもらう部分もあるため、早めに行動しないと期限に間に合わなくなる可能性があります。

しかし、期限は時効が完成するまでの期間である2年以内であれば申請が可能です。原則としては1か月ですが、もし過ぎてしまっても焦らず必要な手続きを進めていきましょう。

再就職手当の受給条件と手続きの流れ

雇用保険

再就職手当は誰でも受け取ることができるわけではなく、いくつかの受給条件が設けられています。ここまでのメリットとデメリットを確認し、申請をお考えの方は、自分は申請できるのか確認しておきましょう。また、受給条件を満たしている場合は手続きについてもご確認ください。

受給条件

再就職手当は下記の8つの条件が設けられています。

①雇用保険に加入している

②待機期間を満了している

③過去3年以内に再就職手当・常用就職支度手当を受給していない

④受給資格決定前に再就職先から内定をもらっていない

⑤再就職する会社は前職と関係がない

⑥失業手当の支給日数が3分の1以上残っている

⑦ハローワークもしくは人材紹介会社経由による就職である

⑧再就職先で1年以上の雇用が見込まれる

待機期間は失業状態であるかを確認するための期間であり、失業保険の受給手続きをおこなった日から7日間と定められています。待機期間内でも初出勤日が待機期間後であれば支給される可能性はありますが、ケースバイケースであるため職員へ問い合わせることが必要です。

5つ目の要件である前職との関係については、前職と同じ会社、取引先、関連企業などが当てはまります。前職に関係なく就職した場合でも認められないため注意しておきましょう。

8つ目の要件は、短期的な採用でなく長期間働くしっかりとした再就職であることが見られています。1年未満の派遣社員であっても契約更新の見込みがある場合は要件を満たします。採用条件が明確に長期間となっていない場合は再就職先と相談することが必要です。

受給できないケース

基本的には受給要件を満たしていないと再就職手当は受給できません。また、下記のケースは受給できなかったケースとして多いものになっています。

①再就職手当申請後すぐに退職

再就職手当は申請後すぐに受け取れるものではありません。申請から3か月後にハローワークが勤務先に雇用が続いているかを確認し、雇用が続いていることを確認できた場合に支給されます。そのため、3か月以内に退職した場合は再就職手当を受け取ることができません。

②支払残日数が足りていない

再就職手当をもらうためには支払残日数が所定給付日数の3分の1以上必要です。支払い残日数は所定給付日数から就職前日までの日数を引くことで計算できますが、就職前日までのことを忘れる場合があります。各日数をしっかりと把握しておき、うっかり要件を満たさないようにしておきましょう。

③再就職先で雇用保険に加入しない

再就職手当は雇用保険の1種であるため、再就職先においても加入が必須となっています。雇用保険は31日間以上の雇用契約、週20時間以上の労働、学生でない、が加入条件です。これらを満たしていると基本的には加入しますが、不安な場合は再就職先に質問しておきましょう。

手続きの流れ

再就職手当は下記の流れで手続きをしていきます。

1.採用証明書をハローワークへ提出する

2.再就職手当支給申請書の受け取り

3.再就職手当支給申請書の必要事項を記入する

4.ハローワークへ再就職手当支給申請書と雇用保険受給資格証を提出

採用証明書は再就職を証明書するものであり、雇用保険の手続きの際に受け取った受給者のしおりの中に封入されています。紛失してしまった場合はハローワークのWEBサイトからダウンロードしていきましょう。この採用証明書は、再就職先の方に記入してもらう箇所があります。

最小証明書の提出後はハローワークから再就職手当支給申請書を受け取ります。前述のとおり、申請は原則1ヶ月以内となっているためご注意ください。また、再就職手当支給申請書は、前職とのつながりがないことを証明する書類に再就職先の方が記入する項目もあります。

記入後はハローワークへ提出します。この際に受給番号や雇用保険受給資格証や失業認定報告書も必要になるため、事前に準備しておきましょう。場合によっては再就職先での勤務実績を証明することが求められるため、職員の指示に従って必要な手続きをお進めください。

再就職手当を受給する際の注意点

再就職手当は再就職を効果的におこなえますが、いくつかの注意点が出てきます。最後に注意点についても確認しておき、制度を適切に利用できるようにしておきましょう。

注意点①雇用保険へ加入しているか

再就職手当は雇用保険に加入していないと利用できません。これは前職と転職先のどちらにも当てはまる条件です。もし、加入しているかどうか不安な場合は勤務先に確認することが必要になります。

また、勤務先に問い合わせがしにくい場合はハローワークに問い合わせることも1つの手です。ハローワークのホームページからダウンロードできる雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票をハローワークへ出すことで確認できます。電話での問い合わせはできないためご注意ください。

また、給与明細の控除項目に「雇用保険」の記載があれば雇用保険へ加入しています。記載がない場合は加入していない可能性が高いです。

注意点②前と同じ会社もしくは関係が深い会社への入社ではないか

同じ会社は分かりやすいのですが、関係が深い会社の要件が少し曖昧なものです。ハローワークによると関係性は「資本・資金・人事・取引面で密接な関わりがある」とされています。自分が知らなかった場合でも認められないため、会社の関係性についてはある程度調べておくことがおすすめです。

具体的に関係が深いかどうかはハローワークの判断になります。どうしても不安が残る場合は再就職前にハローワークへ問い合わせておきましょう。

注意点③再就職先の雇用期間が1年以上であるか

派遣社員やアルバイト・パートは雇用期間が3か月や半年に設定されていることがほとんどです。ただし、更新の見込みがある場合は認められることがあるなど、再就職先との雇用契約・状況それぞれで判断しなければなりません。

また、ハローワークのパンフレットでは下記のような注意文があります。

「生命保険会社の外務員や損害保険会社の代理店研修生のように、1年以下の雇用期間を定め雇用契約の更新にあたって一定の目標達成が条件付けられている場合、又は派遣就業で雇用期間の更新が見込まれない場合にはこの要件に該当しません」

目標達成が定められているか否かでも基準が変わるため、適切な判断はハローワークへ問い合わせてチェックしておきましょう。

まとめ

今回は再就職手当の概要、受給条件、注意点についてご紹介しました。再就職手当は給付率・受給額にメリットがありますが、手続きの煩雑さや難しさなどが出てきます。今の自分に必要な作業を1つ1つ確認し、再就職手当をもらえるようにしていきましょう。

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