パート・アルバイトは社会保険に入らないといけない?
加入条件のチェック方法
2023年9月28日

社会保険はパート・アルバイトをしていると気になる事の1つです。具体的に、どのような条件を満たすと社会保険へ入らなければならないのでしょうか。また、そもそも社会保険に入るのと入らないのではどちらのほうが良いのでしょうか。
ここでは社会保険への加入条件やメリット・デメリットについてご紹介します。アルバイト・パートにおける社会保険について気になっている方は、ぜひご確認ください。
社会保険への加入は義務?
アルバイトやパートの方々にとって社会保険への加入は義務なのでしょうか?それを理解するためには、まずは社会保険とは何かを知ることが重要です。概要を確認したのちに加入条件について詳しく見ていきましょう。
社会保険とは
社会保険は、労働者が生活に支障をきたしたり高齢になって働けなくなったりした際に経済的な補償を受けられる制度です。種類としては、健康保険、年金保険、雇用保険、介護保険、労災保険の5つがあります。
たとえば、社会保険に加入していると病院で受診する際に自己負担が3割まで抑えられます。7割は公的医療保険が負担しており、健康に過ごすことを支援しているのです。また、老後に支給される公的年金も社会保険の1種になります。
このように社会保険は非常に多くの人に関わるものであり、必要不可欠な制度です。
社会保険の加入条件
では、どのような人は社会保険に加入することが義務となるのでしょうか。社会保険の加入条件は下記のとおりです。
・週の所定労働時間が20時間以上
・2ヵ月を超える雇用の見込みがある
・月額賃金が8.8万円以上
・学生以外
・勤め先の事業所の従業員数が101人以上
このように自身の状況と勤め先の両方から条件が定まっています。2か月を超える雇用の見込みや従業員数は勤め先にしっかりと聞いておくことが重要です。
また、上記とは別に厚生年金保険の適用事業所でパート・アルバイトをしている場合は、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が同事業所正社員の4分の3以上になると、社会保険へ加入しなければなりません。
2024年には条件が拡大
社会保険の適用範囲は一定ではなく、すでに2022年に改正されています。具体的な改正内容は下記のとおりです。
特定適用事業所の要件 | 短時間労働者の適用要件 | |
変更前 | 被保険者の総数が常時500人を超える事業所 | 1年以上の雇用が見込まれていること |
変更後 | 被保険者の総数が常時100人を超える事業所 | 2ヵ月を超えた雇用が見込まれていること |
このように、勤め先の従業員数と見込まれている雇用期間について変更されました。そして、2024年10月に再度下記のように改正することが決定しています。
特定適用事業所の要件 | |
変更前 | 被保険者の総数が常時100人を超える事業所 |
変更後 | 被保険者の総数が常時50人を超える事業所 |
2024年の改正では、勤め先の事業所の人数がさらに狭まりました。そのため、事業所が50人規模前後である場合は正確な人数を把握しておくことが必要です。これまで加入義務がなかった場合でも、2024年10月以降に義務が発生する可能性があるため、ご注意ください。
社会保険へ加入するメリット・デメリット

勤め先によっては希望のシフトを出すことができ、社会保険の加入条件を満たすかどうか自分で決められることがあるかと思います。このようなとき、メリット・デメリットは加入すべきかどうかを判断する際に重要な指標の1つです。ここで社会保険へ加入するメリット・デメリットの両方を確認し、自分は加入すべきかどうかを考えていきましょう。
メリット①補償が追加される
社会保険に加入すると下記の2つが追加されます。
・厚生年金による補償:報酬に比例した年金の上乗せ給付
・健康保険による補償:病気や出産時の傷病手当金や出産手当金の支給
メリット②老後の年金額が増える
基礎(国民)年金だけでなく厚生年金ももらえるようになるため、老後の資金により余裕を持たせることが可能です。具体的には下記のように受給額が異なっています。
令和5年度(月額) | 令和4年度(月額) | |
国民年金(老齢基礎年金(満額)) | 66,250円 | 64,816円 |
厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額 | 224,482円 | 219,593円 |
年度によって受給額に少し変動がありますが、どの年度においても国民年金よりも高い金額の年金になっています。
メリット③保険料を会社と折半できる
厚生年金保険料と健康保険の保険料は、労働者側と雇用側が折半して支払うことを原則としています。そのため、自分の負担は少なく保険のメリットを受けることができるのです。
例えば、自営業であれば国民健康保険と国民年金は全額自分で支払わなければなりません。厚生年金保険と健康保険の両方に加入したい場合は、パート・アルバイト先で加入することが大きなメリットとなります。
デメリット①手取り額が減る
社会保険に加入すると毎月の給与から保険料が天引きされます。つまり、手取り額が今までよりも減るのです。
例として、パート・アルバイトによる年収が129万円と130万円の場合を比べてみましょう。130万円は社会保険の加入条件となっており、これらは社会保険への加入前後での変化を知ることができます。具体的な値は129万円が年収124万3,300円、年収130万円が109万689円です(東京都の場合)。
年収130万円の場合、年収が上がっているのに手取り額は少なくなってしまっています。このように、社会保険へ加入する際には手取り額が減ることを認識しておかなければなりません。手取り額は下げたくない場合は、天引きされても手取り額が減らないよう勤務時間を調整することが必要です。
デメリット②配偶者手当が受けられなくなる可能性がある
配偶者手当とは、配偶者がいる従業員に対して支給される手当です。企業によっては福利厚生の1つとして導入しており、使えるお金を多くすることができます。
しかし、この配偶者手当は、配偶者に対して年収や扶養内であることなどの要件があることが一般的です。社会保険へ加入するということは扶養から外れる、あるいは年収がある程度高いとみなされるため、会社の基準によっては配偶者手当が」適用されなくなる可能性があります。
具体的な要件などは会社によって異なるため、気になる方はしっかりと確認しておきましょう。
社会保険に加入せずに働くにはどうすれば良いか
社会保険のメリット・デメリットを確認し、自分は加入すべきかどうか判別できたかと思います。もし、加入したくない場合はどのようにすれば良いでしょうか。ここで、扶養内で働くために具体的にできることを確認していきましょう。
雇用先に伝える
扶養内で働くためには勤務時間、給与が深く関係してきますが、これらは雇用先とのすり合わせが必要です。雇用先によっては多く働いてもらうために雇用していることもあるでしょう。まずは雇用先に扶養内で働きたいことを伝え、シフトなどを調整していきましょう。
収入源を複数にする
社会保険の加入条件は1つの勤務先についての条件です。そのため、掛け持ちによって給与を分散すると条件に当てはまりにくくなります。
しかし、年収130万円を超えると社会保険に入らずとも国民健康保険や国民年金への加入が必須です。収入源を複数にする場合は扶養が外れるのかどうかも考えなければなりません。
週の労働時間を20時間以内に抑える
加入要件の1つに、週の労働時間が20時間を超えることがありました。そのため、加入せずに働きたい場合は20時間に抑える必要があります。
一日5時間働くのであれば4日、1日4時間働くのであれば5日と比較的容易に計算できるため、週の労働時間にしっかりと注意しておきましょう。ただし、労働契約では20時間未満となっていても、実際の労働時間が2ヵ月を超えて20時間以上となり、同じ状態が続くことが見込まれる場合は、3ヵ月目から社会保険加入となります。
31日未満の短期パートで働く
加入要件の1つには2か月以上の雇用が見込まれることがありました。そのため、契約期間が1か月未満であれば加入義務はありません。ただし、下記の2つを満たすと雇用期間が2か月であっても適用されます。
・就業規則、雇用契約等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
・同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合
つまり、契約内容に関わらず実質的に長期間の雇用であれば適用されるということです。
まとめ
アルバイト・パートは労働時間や給与額によって社会保険への加入義務が発生します。しかし、社会保険への加入は年金額の増加などさまざまなメリットもあります。ここで加入するべきかどうかを考え、条件と照らし合わせながら調整していきましょう。